全日本トラック協会が初の飼料部会を設立 飼料輸送の安全確保と維持へ
- 7月15日
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全国のトラック輸送を担う事業者で構成する全日本トラック協会(全ト協)は2026年7月13日、東京・四ツ谷の全日本トラック総合会館で飼料部会の第1回総会を開き、部会を正式に立ち上げた。トラック運送業界全体でドライバー不足が深刻化する中、危険な高所作業や契約外の附帯業務が常態化している飼料輸送において、持続可能な物流を構築することが目的。全国から関係者が集い、ドライバーの安全確保と労働環境の改善を一丁目一番地に、飼料輸送の維持に向けた全国規模での取り組みを始める。
全ト協が飼料輸送に関する全国的な枠組みを設置するのは初めて。全国19道県・92部会員で構成し、九州・沖縄の8県のほか、北海道と青森、茨城、群馬、千葉、新潟、長野、福井、静岡、岡山、愛媛の10県が参加する。このうち佐賀、熊本、宮崎、鹿児島の4県は既に県単位で飼料部会を設置しており、北海道、大分県でも今後、道県で部会を設ける見込み。
日本の畜産業は地域経済の要であり、安定的な飼料供給が滞れば、地域経済への影響も甚大だとして、特に濃厚飼料の輸送を念頭に、国や自治体、飼料メーカー、生産者、畜産関係団体、運送事業者が一体となって対応すべく、農水省・国交省・厚労省などとの連携の下でスピード感をもった課題解決に当たるための全国組織を設けた。
運送業界では輸送力の不足による「荷物を運びたくても運べない」状況が懸念されており、特に飼料輸送は他の運送業務と比べ安全面での問題が大きく、その改善が喫緊の課題となっている。例えば、畜産農家での飼料貯蔵用タンクへの補充作業の際、老朽化した設備などに起因するドライバーの転落事故が起きているほか、各農家に合わせた独自の添加剤をバルク車の上部へ担ぎ上げて投入する作業でヒヤリハット事例が発生するなど、危険を伴う高所作業が常態化している現実があるという。これらの高所作業を含めた契約外の附帯作業や、非効率な運送も飼料輸送の持続可能性を阻む要因となっている。
全ト協輸送事業部は飼料タンクの在庫確認や発注代行、配送計画の作成まで運送事業者が担っている実態を指摘したほか、農家側の飼料残量管理不足による突発的な発注や、それに伴う小ロット・多頻度配送を課題として挙げた。
高所作業削減、コストの価格転嫁など目標
総会には17社が出席し、初代部会長に株式会社FK物流(宮崎県都城市)の福田博代表取締役を選任した。
就任のあいさつで福田部会長は「飼料輸送には問題が山積している」と危機感を示し、直近でも過積載に起因する横転事故や、運送会社の社長および運行管理者が逮捕される事案が発生していることに触れ、「日本の畜産を守るためにも、コンプライアンスを守り、大切なドライバーを守るため、関係省庁へしっかりと陳情していきたい」と力強く決意を語った。
また、福田部会長の指名により、副部会長として釜渕運送有限会社(青森県田子町)の釜渕嘉与社長、行方運送株式会社(茨城県行方市)の熊谷茂穂社長、藤井運送株式会社(岡山県井原市)の藤井和利代表取締役の3人を選任した。
事業計画では、近年の経済情勢やトラック適正化2法の全面施行を見据え、飼料輸送事業の安定的経営と労働環境の整備を主軸に、①ドライバーの危険な高所作業の削減②飼料輸送における非効率な運送・附帯業務の削減③コストを踏まえた価格転嫁の推進――を活動目標とする。
具体的には、飼料タンクやバルク車での高所作業を減らすため、安全向上のための構造変更や適切な管理、機器整備を推進する。また、運送以外の役務である附帯業務を明確化し、対価等の書面化を推進するとともに、飼料メーカーや畜産関係者と連携し、長距離・長時間輸送の削減を目指すとした。
このほか、家畜伝染病の頻発に伴う消毒作業や運行計画の変更など、運送事業者の負担が増しているとして、国交省や農水省、厚労省との意見交換を積極的に実施し、現場の実態に基づいた施策を要請していく考え。
飼料タンク整備、費用負担のあり方が課題
総会の後半には意見交換が行われ、参加者の間で課題解決に向けた情報の共有がなされた。
高所作業の原因となっている飼料タンクについては、飼料タンクへの昇降時に起きている転落事故を念頭に、下から投入できる安全な仕組みなど、登らなくて済む飼料タンクへの移行が急務だという指摘がなされた。安全装置の追加にかかるコストは飼料タンク1基当たり10万円前後だという見方が会場から示されたが、一方で宮崎県だけでも約3万基のタンクが存在するという試算もあり、費用負担のあり方が大きな壁となるとした。
地域特性も課題になりそうだ。釜渕副部会長は、「豪雪地帯では飼料タンクの上に1.5mもの雪が積もる。その雪を取り払うために、結局は高所に登らざるを得ず、開閉式の安全装置などを導入しても夏場しか機能しない」と指摘。これに対し、メーカーなどとも協議を進めていると話し、上部投入ではなく下部からの投入方式など、抜本的な形状変更の検討が求められるとした。また、飼料メーカーから譲渡されて以降、責任の所在が不明確なタンクも散見されるといった、安全管理に関する問題も指摘された。
このほか、高所作業にかかる附帯作業料を請求してはどうかという意見について、福田部会長は危険な作業をドライバーにさせないことが本旨であると見解を示した。
なお、総会終了後には農水省畜産局飼料課との意見交換会も非公開で行われた。
(山根藍利)
≪酪農経済通信/2026年7月15日付≫
原題:全日本トラック協会、初の飼料部会を設立
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