日本酪農乳業史研究会が2026年度シンポジウム 酪農乳業史を4題報告
- 6月23日
- 読了時間: 3分

日本酪農乳業史研究会は6月20日、東京・新小岩の東京聖栄大学で2026年度シンポジウムをオンラインを併用して開催、酪農乳業関係者を中心に酪農乳業史に興味を持つ約30人が参加し、わが国酪農乳業産業の歴史的構造や酪農史に関する報告4題の後、参加者同士で意見を交わした。
地域乳業は独自の戦略的転換を進めている
基調講演では、前田浩史会長(ミルク1万年の会代表世話人)が「わが国酪農産業の歴史構造」と題し、2025年に出版した著書「日本酪農産業史」(農山漁村文化協会)から、明治期以降の日本の酪農産業における約150年の歴史的変遷を概観するとともに、激しい市場競争や環境変化を生き抜いてきた地域乳業の多様な生存戦略を紹介した。
講演で前田会長は、近現代における日本の酪農乳業産業の歴史的な構造変化について「黎明期(幕末~第1次世界大戦)」「発展期(第1次世界大戦~第2次世界大戦)」「転換成長期(終戦~1970年代)」「成熟期(1970年代~現在)」の4期に分類して概説した。
その中で、現在の生乳流通制度は戦後の「転換成長期」において、自由貿易化(GATT体制)の脅威に対抗するために、「用途別価格制度」「加工原料乳不足払い制度」「指定団体制度」といった国内農業の防衛システムが法制化され、その後の日本の酪農産業の原型になったと説明した。
さらに前田会長は地域乳業6社(YUDAミルク、トモヱ乳業、新潟県農協乳業、中央製乳、ひまわり乳業、永利牛乳)の事例を紹介した上で、地域乳業の多様な生存戦略として、他社が撤退したエリアの学校給食を全域でカバーして地域のインフラを独占する戦略や、地元の生産者と生協を結ぶ顔の見える関係性マーケティングを展開することで価格競争に巻き込まれない地盤を構築する「地域インフラや地域との関係性の独占」、高利益率のプレミアムヨーグルトへの選択と集中や高齢者向け製品など大手の手が回らない超独自商品に特化する「高付加価値化に代表される独自の製品価値創造」、災害に強い強靭な製造体制を構築し、完全自動化や供給力の強化に注力した「圧倒的な効率と規模の追求」といった独自の戦略的転換を実行することで、大手乳業の規模の経済性や量販店の価格圧力に対抗してきたと指摘した。
嶺岡牧をめぐる歴史や北海道乳業史も報告
特別講演として、小笠原永隆氏(帝京大学経済学部観光経営学科教授)が「嶺岡牧の歴史的価値と高次元利用に向けて」と題し、千葉県鴨川市と南房総市にまたがる江戸時代の幕府直轄牧(牧場)のひとつで、「日本酪農発祥の地」として、千葉県の指定史跡に登録されている嶺岡牧(みねおかまき)の歴史を概説した上で、長年に渡って嶺岡牧の調査・研究に取り組んできた日暮晃一氏(故人)の足跡を振り返った。併せて地域資源としての活用に向けた一環として地域住民らによる調査・研究やスチュワード(ガイド)養成などの動きについても紹介した。
特別講演に関連して、佐藤将平氏(日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科准教授)は「千葉県嶺岡地域における酪農乳業発展のダイナミズム――森永ミルクキャラメルから読み解く――」と題する報告で、原料として煉乳が使われている「森永ミルクキャラメル」というひとつの商品を通じて、千葉県嶺岡地域における酪農乳業発展のプロセスを分析した。
このほか、井上将文氏(北海道大学文学研究院専門研究員)は「戦前期北海道における酪農乳業の発展」と題し、戦間期の北海道における乳業史をめぐり、北海道製酪販売組合連合会(酪連、雪印メグミルクの前身企業のひとつ)、森永系乳業資本(森永製菓・森永煉乳)、明治系乳業資本(明治精糖・明治製菓)の3者に注目し、考察した。
報告終了後の総合討論では、4氏による報告に対して意見交換が行われた。
(斎藤丈士)
≪酪農経済通信/2026年6月23日付≫
原題:日本酪農乳業史研究会がシンポジウム開催
.webp)








