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酪畜連携による和牛生産の最前線を学ぶ 明治飼糧北海道荷受組合が講演会㊤

  • 7月16日
  • 読了時間: 5分
藤本高史氏
藤本高史氏

 【帯広=北海道】明治飼糧北海道荷受組合が主催する講演会「北海道十勝における酪畜連携最前線」が2026年7月3日、帯広市の帯広市民文化ホールで開かれ、約250人が参加した。

 講演会では、藤本牧場(清水町)代表の藤本高史氏と株式会社武隈ブリーディングファーム(豊頃町)代表取締役社長の武隈英和氏らを中心とした酪農家と畜産農家の連携などについての講演が行われ、参加者は子牛の飼養管理やゲノミック評価を活用した牛群改良、酪畜連携のポイントなどについて理解を深めた。

 藤本氏は「和牛生産とホルスタインゲノム改良」と題して牧場の取り組みを紹介。武隈氏は「酪畜連携の取り組みと黒毛和種受精卵の方向性」について講演した。また、藤本牧場のサポートを行っているコンサルタントの株式会社ARADE(帯広市)の新出展之氏がサポート内容について説明。株式会社たいき牛群管理サービス(帯広市)の行田高弘氏がゲノムや牛群改良の進め方などについて解説した。

 ここでは藤本氏と武隈氏の講演内容を紹介する。


基本的なことを行うのが一番重要――藤本氏


 このうち、藤本氏は自身の経歴を交えながら牧場で生産効率向上の取り組みや和牛受精卵の導入、酪畜連携の経緯と内容などについて説明した。

 藤本牧場は経産牛223頭(うち搾乳牛195頭)と育成牛97頭を飼養し、年間で2,200tの生乳を出荷しているほか、年間180頭の和牛を生産している。

 藤本氏は21歳で親元就農し、26歳で父から経営を譲り受けた。31歳で初めて従業員を雇用したものの定着せず、ほとんどの作業を1人で行っていたことが作業効率を考えるきっかけになったと振り返る。

 その後、新出氏やたいき牛群管理サービスの田畑力獣医師との出会いから、「信頼できる専門家に相談し教わったことを実践するのが牧場を改善する近道」と感じるようになったとした。しかし37歳の時に牧場でサルモネラ症が発生。「甘さを実感した」とリスクの認識を改め、子牛ハッチの洗浄や、搾乳牛で導入していた砂ベッドの乾乳牛への導入、ゲノム検査の導入などを行った。

 砂ベッドの導入については、飼料設計などとともに「生産性を高める具体例」の1つと説明。乳房炎のリスク低減や牛の快適性向上といったメリットがある半面、砂の購入・処理にコストがかかることや管理を誤ると不衛生になるデメリットもあるとした上で「導入してから乳房炎は全く出ていない。使った砂は畑にまいて問題ない。(牧場があるのは)粘土質で砂をもっとまいても良いくらいの土地。だからリサイクルせずベッドに砂を使えている」と解説した。

 和牛受精卵の取り組みは、飼料費が高騰した際に新たな収入源をつくろうとしたのがきっかけ。受精卵は全て武隈ブリーディングサービスから購入している。その理由を「(武隈氏が)地域のことやこれからの和牛業界のことを考えて行動している」とした上で「何か協力できることはないのか考え、卵を買うことにした」と振り返った。その後、受精卵から生まれた子牛の中から購入する牛を武隈氏に選んでもらうよう提案すると、武隈氏から「一緒にやろう」と声をかけられたのが酪畜連携を始めるきっかけとなったと述べた。

 和牛は分娩をカメラで監視し、問題がなければ自然分娩で出産させる。産まれた直後にシャンプーを行い、エアコンで温度管理された部屋で乾燥。翌日、床暖房があるハッチに移動する。全頭で初乳製剤を使い、生乳は使わない。30日齢ほどまでは最大9Lの粉ミルクを給与し、その後は哺乳ロボットに移行する。

 作業・施設面では、ペンや床は必ず洗浄している。機械は除糞、洗浄作業が行いやすい設計となっており、換気は1時間で4回転している。

 ホルスタインのゲノム改良も実践している。獣医師からの提言により牧場に残す牛は価値の高い牛であるべきと改良を開始。当初は高ゲノムのヤングサイアーを授精させ、TPI(注・牛の生産性、健康性、形態を総合評価する指標)を高めることに主眼を置いた。

 しかし生体内卵子採取(OPU)の視察などが転機となり「全頭が受精卵移植をする時代がやってくる」と2021年に輸入卵20卵を購入し、輸入卵移植を開始する。2022年には牧場でのOPUを始め、繁殖や健康指数の高い牛群への改良を進め、2023年には一部の未経産牛を除いて全頭受精卵移植を開始。和牛を効率的に産ませられる改良にかじを切った。

 牧場でのOPUは、ゲノム検査の結果を基に生産寿命や経産牛受胎率などの繁殖の数値が高く、ネットメリットも高い牛を選定して行う。直腸検査やプローブの挿入に支障がない体格となってから開始することとしており、現状では6カ月齢以上となってから開始している。1頭当たりの受精卵生産数は約6個となっている。

 今後は優良な遺伝子を最大限発揮できる環境づくりや遺伝資源を共有できる同じ志を持つ仲間づくりを進めるほか、粗飼料の品質改良や技術者が挑戦できる機会の提供にも力を入れることとしている。

 藤本氏は「とにかく基本的なことを行うのが一番重要。当たり前のことを当たり前にやる。気になったらすぐに行動してほしい。技術者がいないからできないという声も聞くが、酪農家が技術者を育てる環境をつくってほしい」と呼びかけた。また、酪畜連携については「本質は互いをリスペクトする関係性。お金や仕組みだけでは成立も継続もできないと思う」と述べた。(つづく)

 (構成・佐藤世一)

 ≪酪農経済通信/2026年7月16日付≫

 原題:明治飼糧北海道荷受組合が帯広で講演会㊤

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