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TMR見直しと二毛作でコスト抑え日乳量3kg増 北海道浦幌町・デイリーブルーダー

  • 7月27日
  • 読了時間: 7分
キャプション:高橋さん一家。前列左から長男・柊弥(とうや)君(7)、二男・一颯(いぶき)ちゃん(4)、長女・侑那(ゆうな)ちゃん(5)、後列左から貴徳さん、みゆきさん、いづみさん。牧場では随時スタッフを募集中
キャプション:高橋さん一家。前列左から長男・柊弥(とうや)君(7)、二男・一颯(いぶき)ちゃん(4)、長女・侑那(ゆうな)ちゃん(5)、後列左から貴徳さん、みゆきさん、いづみさん。牧場では随時スタッフを募集中

 北海道十勝管内浦幌町の株式会社デイリーブルーダーは、高橋貴徳さん(39)が妻・みゆきさん(36)の父・福一さん(67)から経営を譲り受けるため、2022年に法人化した。23年に経営主となり、「会社が成長するためには投資が必要」という考えの下、設備や機械の更新を進める一方、TMRの内容変更でコスト削減と乳量アップを実現。加えて、飼料生産最大化のため二毛作を始めるなど、さらなる増頭に向け基盤を固めている。

 ※本記事は、月刊デーリィマン本誌(2026年4月号)に掲載した記事を、デーリィマンプラス向けに一部体裁を整えて掲載するものです。


TMRを調製する貴徳さん。機械が好きな柊弥君は、学校がない日に一緒に乗って作業することもある
TMRを調製する貴徳さん。機械が好きな柊弥君は、学校がない日に一緒に乗って作業することもある

有機質資材使った土壌改良で周産期疾病減少


 高橋家は1933年、福一さんの祖父が新潟県から入植したのがルーツ。農耕馬を使って豆類、馬鈴しょ、てん菜などを栽培しつつ、60年ごろには乳牛を少頭数導入し、複合経営になった。馬鈴しょ、豆類、小麦などの栽培が盛んな十勝の他地域に比べ気象条件で不利だったこと、周りの農家より入植時期が遅く畑面積の拡大が難しかったことから、81年、福一さんが酪農専業に転換した。北海道帯広農業高校を卒業し家業に就いた福一さんは、83年に増頭を見越し、周辺の酪農家よりも一足早くミキサーを導入して省力化を図った。

 一方で、第四胃変位やケトーシス、胎盤停滞などの周産期疾病が多発するなど牛の健康に課題があったため、土づくりと草づくりに力を入れた。pH調整のため消石灰を施用すると土壌がアルカリ性に寄り過ぎるため、ホタテの殻や貝化石といった有機質資材に切り替え、適正なpHと軟らかい土壌を実現した。

 「消石灰を入れると土が硬くなる。土壌改良を進めて良質な粗飼料を十分与えると、病気はかなり減った」と福一さん。

 土づくりによる粗飼料の質向上だけでなく、乾乳牛管理も見直し、ミキサーの設定変更により切断長を短くして食べやすくし、分娩1週間前から配合飼料を3kg増給するなどして栄養不足を防いだ。その結果、月に1、2頭発生していた第四胃変位が年に2、3頭に減少。低カルシウム血症を含む周産期疾病で獣医師を呼ぶことはほとんどなくなった。

 飼養頭数は就農時の28頭(うち搾乳牛16)から徐々に増え、160頭(うち搾乳牛70)に拡大。98年にはパラレルパーラーを備えたフリーバーンを建て、つなぎ飼いから放し飼いへ転換した。


哺育を担当するいづみさん。「和牛は寒冷対策とミルクの量を個体ごとに細かく管理している」
哺育を担当するいづみさん。「和牛は寒冷対策とミルクの量を個体ごとに細かく管理している」

法人化によって投資や雇用でメリット


 現在、総飼養数210頭(経産牛120、育成牛90)、飼料畑面積70ha(牧草38、トウモロコシ32)で年間1,200tの生乳を出荷する。個体乳量は1万670kg。乳質は乳脂率4.6%、タンパク質率3.57%、無脂固形分率9.0%、体細胞数12万個/mLと良好な水準で推移する。

 育成舎も含め3棟のフリーバーンと、つなぎ牛舎で管理し、哺育牛は旧搾乳牛舎を利用してつなぎ飼いしている。作業は貴徳さんがTMR調製、除糞、圃場作業を、福一さん、みゆきさん、みゆきさんの妹・いづみさん(34)が哺乳と搾乳など、従業員1人は搾乳と育成牛の給餌をそれぞれ担当する。

 帯広市出身の貴徳さんは帯広工業高校を卒業後、東京での営業職を経て、帯広市で不動産関係の営業に従事していた。共通の知り合いを通じて出会ったみゆきさんと結婚したのを機に、32歳で就農。みゆきさんは酪農学園大学(江別市)を卒業すると同時に実家で就農し、家族で牧場を切り盛りしてきた。

 貴徳さんは就農当初について、「農業は、働く時間は自分次第だが、1年目に経験を積むことを優先してできることを増やしていけたのはよかった」と振り返る。

 搾乳から始め、2年目から除糞や圃場作業などの機械作業や経営管理にも関わるようになった。省力化の必要性を実感し、搾乳ロボット導入と、それに伴うバンカーサイロや堆肥舎、哺育舎の新設を2020年から2年かけて構想した。しかし、見積もりが終わり着工する一歩手前で、資材が高騰し、資材の調達も見込めない事態に見舞われる。

 「当時の価格で6億7,000万円の投資を予定していたが、先が読めないので一度白紙にした。恐らく今では2倍以上の額になる」

 ロボット牛舎の新築は白紙になったものの、「投資は会社が成長するのに必要」と考える貴徳さんは、「繋(つな)げよう楽農」を理念に掲げ、ドイツ語で「同胞」や「兄弟」を意味する「ブルーダー」を冠し、牧場を法人化した。

 「法人化すれば資金調達などの面で投資の幅が広がり、雇用のハードルも下がる。子どもが継がなくても牧場を残せるように、あえて高橋の名前は付けなかった」

 町の求人サイトを通して初めて従業員1人を雇い、バンカーサイロを8基から10基に増設。ハーベスターなどの機械類を更新するなど、規模拡大に向けて着実に動き始めた。


「牛の快適性のためにフリーバーンを選んだが、汚れは付きやすいので搾乳時の清拭は大事」と福一さん(写真手前)
「牛の快適性のためにフリーバーンを選んだが、汚れは付きやすいので搾乳時の清拭は大事」と福一さん(写真手前)

トウモロコシ5t、ライ麦3tの反収確保


 増頭が進んだことで、2025年度の年間出荷乳量1,200tから26年度は1,300tを見込む。圃場も近隣の離農した耕種農家から購入し、2026年4月に80haへ拡大した。

 餌は自家調製のTMRを与えている。搾乳牛用は配合飼料9.6kg、ビートパルプ2.5kg、自給粗飼料をメインに調製し、給与量は1頭当たり1日60kgに設定。貴徳さんに代替わりしてからは配合飼料の種類を変更し、元々栄養濃度の低い配合飼料でかさ増ししていたのを、濃い飼料に替えて総量を減らし、コストを削減した。

 かさ増しのため圧ぺんトウモロコシを使っていたが、ビートパルプへの変更でコストを抑えて繊維質も補えるようになった。これによって日乳量は、貴徳さんが就農した頃の32~33kgから35~36kgに増加。「頭数は1.5倍になったが、経費は1.2~1.3倍に抑えられた」

 自給飼料生産には二毛作を取り入れ、トウモロコシの圃場32haのうち9haにライ麦、牧草38haのうち5haにソルガムをそれぞれ作付ける。以前は1番草の在庫が1年持たないほど不足気味だったが、二毛作の導入により適期分散で収穫作業が重複することなく、10a当たりトウモロコシ5tとライ麦3tの合計8tの収量を確保できている。

 自家調製するTMRについては、2日に1回成分検査を行い、栄養管理を徹底する。特にエネルギーバランスには留意しており、乳タンパク質率を3.5~3.6%に維持できるよう、MUN(乳中尿素窒素)のチェックは欠かさない。このほか、水分値や粒度などを確認してミキサーに入れる順番などもその都度変更している。

 「牛の健康を維持するため、TMRの成分は細かく調整している。気候や飼料の質など毎日変化する要素が多いのでチャレンジの日々。やり過ぎと思うくらいでちょうどいい」と貴徳さん。

 昨年から和牛生産を始めた。経産牛の6割に和牛受精卵を移植するが、そのうち半分は地域の肥育農家と借り腹制度によって生産している。自費で受精卵を購入し市場出荷したケースに比べ販売価格は下がる傾向にあるが、生後約30分で引き取りに来てくれ、受精卵の購入費と哺育にかかるコストがかからず、子牛は定額で売れるなどメリットは多い。

 和牛管理の手間が増える寒冷期は、自費での受精卵移植はせず借り腹のみにすることで、投資リスクと作業負担を減らしている。

 今後は、スタッフの増員に向け売り上げアップを目標に掲げる。

 「誰がやっても同じレベルでできるように作業の簡素化を進め、“スキマバイトサービス”のような新しい雇用にも対応できるようにしたい。理想は長期休みを確実に取れる会社。海外研修も会社として実施できたら」とビジョンを描く貴徳さんだ。

【文・山之上彩香/写真・鈴木中弓】


「夫婦で初出場した大会で優勝してから家族でモルックに“ドハマり”している」と貴徳さん。子どもたちも大会に出るなど、一緒に競技を楽しんでいる
「夫婦で初出場した大会で優勝してから家族でモルックに“ドハマり”している」と貴徳さん。子どもたちも大会に出るなど、一緒に競技を楽しんでいる

【牧場概要】

飼養頭数:乳牛210頭(うち経産牛120)

飼養形態:放し飼い(フリーバーン)

飼料畑面積:70ha(牧草38、トウモロコシ32)

出荷乳量:1,200t/年


初出:月刊『デーリィマン』2026年4月号

初出企画:らくのう一家の生活

原題:TMRの内容変更や二毛作導入でコスト抑えつつ日乳量3kgアップ牧場の“成長”のため法人化、規模拡大の準備着々

※本記事は掲載時点の内容です。

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