《北のめん羊ワンダーランド 3》サフォーク信仰の先へ 交雑と品種改良で考える羊の未来
- 7月10日
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更新日:7月26日

サフォーク信仰の先にあるもの
交雑種、品種改良、育種評価の現在地
国産羊肉の代表的な品種として知られるサフォーク。だが、世界のめん羊生産では、目的に応じた交雑や品種改良が進んでいる。第3回は、サフォーク信仰の背景や、交雑種の活用、海外で進む品種改良を手掛かりに、日本のめん羊改良の現在地を聞いた。
(聞き手・構成=星野晃一/全5回の3回目/2026年4月2日取材)
ゲスト 北海道めん羊協議会会長・武藤浩史さん
同顧問・河野博英さん
近親交配を避けるための交雑種
――現状では数が限られているので、近親交配になって能力低下が心配されませんか。
河野 ええ。ですからそれを避けるために一時、交雑種がとても増えたんですよ。純粋種の繁殖ができない状況になってしまって。交雑種が悪いわけじゃないんですけど、やみくもにやると、よく分からない羊がどんどん増えちゃう。
武藤 うちの牧場も雑種なんですよ(笑)。サフォークとポールドーセットの2種飼っていて、その純粋種とどちらかの交雑種で構成されています。
――お客さんは、純粋種を求める傾向ですか。
河野 いまだにサフォーク信仰が続いていますね。サフォークだからおいしいという……。
武藤 まあ、国産の7割がサフォークなんで、国産はおいしい=サフォークはおいしい、となるのは仕方ない面もありますが、「サフォークありますか」と問い合わせがあると「サフォークだけではないし、品種指定は受けません」と答えるんです。
で、次のように説明します。「羊は世界に3,000品種いるんです。そのうちサフォークが一番と決めた人はいませんし、認知されてもいません。海外では交雑種が一番流通しているし、品種を指定するのはナンセンスですよ」と。それで向こうが納得して、こちらに出せる余力があれば取引するし、それでもサフォークにこだわるならお断りします。
肉用種として広がったサフォーク
河野 日本のめん羊は元々、軍需産業として羊毛を取るために飼われ始めました。メリノからコリデールへ、そして戦後は羊毛の需要がなくなってコリデールでは全然お金にならないから、肉用種にしようと選ばれたのがサフォークです。その当時の家畜商は、コリデールだとほとんど値段を付けず、サフォークはかなり高い値段で買い取っていきました。
サフォークは海外では「ターミナルサイアー」といって肉をつくるための止めオスなんです。三元交配の最終サイアー、最後のオスっていう意味なんです。
メスからは毛を取るんですが、毛を取る品種っていうのは肉に脂が付きやすい。太らせれば太らせるほど脂がどんどん付いていくので、ターミナルサイアーにはできるだけ脂が付かない、赤肉量の多いものに改良されていくんです。
武藤 まあ、海外では脂肪が付く肉は嫌われているから。リーンミート(脂肪の少ない赤身肉)志向なので。サフォークは最後に掛け合わせたら大型化するので、肉の量が取れるんですよ。今でもサフォークはその能力を持っていますが、最終サイアーを何にするかは、農家が選択するので、時代によって、はやりすたりがあります。
サフォークの故郷はイギリスのサフォーク州ですが、それがNZに渡って最終サイアーとしてある程度増えた。で、それを日本などが輸入した。ところが今、NZではサフォークのニーズがなくなってきて、とって代わったのはテクセルという品種です。他にもドーパーなども人気ですが、毎年のように新種が出てきます。遺伝的改良はものすごく進んでいるんです。
海外で進む品種改良
河野 今NZで割とはやっている品種に、テクセルとサフォークを掛け合わせたサフテックスがある。テクセルはモモの肉が多くて枝肉歩留まりが良く交配種として優れているので、フレームが大きいサフォークと掛け合わせたら良い品種になるだろうと。
――では、日本でもサフテックスぽい品種はつくれなくはない?
河野 できなくはないです。今日本である程度多い品種は、ポールドーセットやサウスダウン。テクセルも商社が初めて輸入しました。サフォークとサウスダウンを交配したらサウスサフォークになるし、サフォークとポールドーセットを交配したらホワイトサフォークになります。そういう交雑を組み合わせる余地が残っています。
武藤 自分の牧場に適した交雑種をつくることはできます。でも、日本で品種固定するのは無理ですね。そこまでのバリエーションはないので。まあ、F1(1代目の交雑種)でもF2(2代目の交雑種)でもいいぐらいで考えています。F1だと悪いものができないはずなので、それを肉用にするとか、雑種強勢をつくることにもなります。そのためにも、両方の純粋種は持ち続けないといけません。この両方をやらないといけないという苦しさがあります。
河野 だから海外ではそれぞれの品種ごとにブリーダーがいるんです。
産業化には育種評価が欠かせない
武藤 海外ではセリで目的の品種を落としてくれば済む。で、あの牧場のは良くなかったから、次はこっちのだっていう。どこの牧場の何が、どれぐらいの育種価持っているか分かるようになっています。日本でも、似通ったようなことはできなくはない。群れの中で1番から100番まで順位を付けるような群内評価はできるんです。
乳牛のように総合力を出すのは難しいのですが、増体率と産子率を使って出せないことはない。ただ、そこまで考えて羊を飼っている人が国内でどれだけいるかな。
河野 北海道めん羊協議会で毎年、繁殖成績のアンケートを取っているんですが、答えてくれるのは30%余り。会員の中でもそんな認識です。
武藤 いろいろな意味で、まだ産業には至っていない。この先、産業になるかどうか簡単ではありません。家畜として、羊の国内飼養頭数をもう一度100万頭まで盛り返すことを考えると、さっき言ったように足りないものがいっぱいあるんです。ペットや趣味ではなく、採算が合う経営になるには厳しいのが現状です。
◇
めん羊を産業として広げるには、品種改良だけでなく、新たに羊飼いを目指す人を支える仕組みも欠かせない。次回は、新規就農、と畜場、獣医療、経営規模など、羊飼いを取り巻く現実に迫る。
次回はこちら
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