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《北のめん羊ワンダーランド 13》大小さまざまな個性が道産羊肉の魅力に ブームに流されず価値を届ける

  • 7月14日
  • 読了時間: 4分
北海道めん羊協議会の講演で、北海道産羊肉の価値づくりについて語る東澤壮晃さん
北海道めん羊協議会の講演で、北海道産羊肉の価値づくりについて語る東澤壮晃さん

大小さまざまな個性が道産羊肉の魅力に

ブームに流されず価値を届ける


 北海道産羊肉には、牧場ごとの個性がある。小規模な牧場が多く、地域や飼い方、育てる人によって一頭一頭に違いがある。前編では、北海道名寄市の㈱東洋肉店代表取締役でラムバサダーの東澤壮晃さんが、羊肉専門店として羊肉の価値をどう届けてきたかを紹介した。後編では、北海道産羊肉の多様性や、ブームに流されず価値を育てることの大切さについて、東澤さんの講演から紹介する。

 (構成・写真=星野晃一/前後編の後編/2026年5月収録)


大小さまざまな個性が道産羊肉の魅力に


 最後に、北海道の羊肉の可能性といえば偉そうなのですが、私自身が、今後、こんなふうに販売できればいいなということを話します。

 北海道では50~100頭規模、多くて1,000頭弱の規模で羊を飼われている牧場がほとんどだと思います。つまり、1年間安定して1つの牧場で供給できるほどの規模ではない牧場の集団だと思います。

 当初、私は、その小さな牧場から届く羊が、たとえ同じ品種で同じ月齢であっても毎回違っていることをマイナスに捉えていました。お客さんから「この前の羊おいしかったから同じのをちょうだい」と言われても、二度と巡り会えないからです。

 でも、その考え自体が間違っていて、毎回違うことを価値にすればいいと、考え方が変わっていきました。

 この違いというのは品質の良しあしだけではなく、毎回特徴が違うという意味です。北海道の中でも海側で育てたり、雪が大変多いところで育てたりとか、とっても明るい人が育てていたり、あんまりしゃべらないおじさんが育てたりとか……農家さんによっていろいろ違いがあります。この多様性自体を楽しもうというのが、私にとっての北海道産羊の魅力なのです。

 ワインで例えると、各地域にいろんな生産者がいて、同じブドウの品種を使っていたとしても、違うワインができる。こんなイメージで捉えていただければいいと思うのです。大小さまざまな個性が集まることで、北海道全体の魅力になるというのが私の考えです。

 さらに、北海道産という名前で売るよりも、〇〇牧場の何という品種の羊、として売った方が価値は崩れづらい。

 30年前は非常にニッチな市場で、この間にブームが起きていきなり羊が売れ出して肉が足りなくなったり、そのブームも1、2年で去ってしまったりと、いろいろありました。ブームが起きた時にわれわれがやらなければならなかったのは、一生懸命売るだけではなく、追い風を利用して羊自体の価値の底上げをすべきでした。

 もちろん、やってきたつもりでしたが、いろんなメディアの情報の方に消費者の目が行ってしまって、私たちの思いがきちんと伝わっていなかったのです。


売れることと価値が育つことは違う


 ブームが来ること自体は全然悪いことではなく、私たちも助かった部分がたくさんあります。2004年の第1次ジンギスカンブームの時、東京都にジンギスカン屋さんがたくさんできましたが、その8割がうちのお客さんでした。で、翌年には10分の1ぐらいに減って、税金を払うのが大変でしたが(笑)。

 新しいお客さんが増えて、ジンギスカンをたくさん食べてもらうことで、羊肉に近づいていってくれたことは、ブームとして意味があったことですが、その中で心に引っかかったのは、売れることと価値が育つことは違ったということです。

 羊肉の人気が出た、売れた、これからは安泰だなと思っていたけど、実際はそうではなく、これは自由経済なのでしょうがないのですが、望まない価格競争があり、羊肉に関してあらぬ情報が出てしまったり、受け取る側によってはわれわれが望んでいる価値観とは違うイメージが付いてしまうことがありました。

 今も追い風に乗って、いろんな店が出ています。ジンギスカン店はもとより羊肉コンセプトのレストランなど、今東京では出店ラッシュが一服していますが、今度は関西や九州など地方都市で新しいレストラン、飲食業界がたくさんできています。

 こうした状況にあまり振り回されることなく価値を崩さず、届け続ける――。私が長い間やってきて、教訓として残っています。

 私たちが生まれた北海道という土地の羊肉が今よりもっと価値が高くなり、未来へつないでいけるよう、今後も愚直に羊肉屋を続けていきたいと思っています。


前編はこちら

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