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《北のめん羊ワンダーランド 11》道産羊毛を織物へ サプライチェーン構築に挑むジャパン・ウール・プロジェクト

  • 7月13日
  • 読了時間: 5分

更新日:7月30日

織物製品を手にするジャパン・ウール・プロジェクトのメンバー。左から2人目が伊藤核太郎代表、右端が本出ますみさん=Japan Shears 2026会場
織物製品を手にするジャパン・ウール・プロジェクトのメンバー。左から2人目が伊藤核太郎代表、右端が本出ますみさん=Japan Shears 2026会場

道産羊毛を使った織物の商品化を目指す

ジャパン・ウール・プロジェクトの挑戦


 刈り取った羊毛の多くが堆肥化などに回され、毛織物などの製品化はごく一部に限られている。これが日本のめん羊産業の現状だ。羊飼いにとっては、羊毛に付着したごみや汚れを取り除く手間が重く、安価な海外産とはコスト面でも太刀打ちしにくい。

 こうした状況を打開し、日本で飼養されている品種の羊毛を生かした織物の商品開発を進めようと、2019年から始まったのが「ジャパン・ウール・プロジェクト」だ。羊牧場から洗毛・染色業、紡績業、製織業まで、羊毛に関わるさまざまな企業などで構成し、国産羊毛を資源として活用することで、国内のめん羊牧場を側面から支援しようと活動を続けている。

 ジャパン・ウール・プロジェクト代表で、国島㈱代表取締役の伊藤核太郎さんに、プロジェクト発足の経緯や国産羊毛の特徴、サプライチェーンづくりの現状を聞いた。

 (聞き手・構成=星野晃一/2026年5月取材)


捨てられていた羊毛との出会い


 ――ジャパン・ウール・プロジェクトがスタートしたきっかけは。


 伊藤 道北の商工会議所の方が、私の地元(愛知県一宮市)の信用金庫を通じて、道北のある羊飼いを紹介したいと。当時4頭飼っていて、雰囲気のある服も作っているのですが、もっと売れないものか、という話でした。

 詳しく話を聞こうと思い、2018年11月に牧場に行ったら「北海道の羊毛はほとんど捨てられている」と聞いたんです。それまで、原料はオーストラリアとかニュージーランドから来る前提で考えていたけれど、「そうだ、日本にも羊はいる」と改めて気づかされました。で、「その原料が捨てられているのは、そりゃいかんでしょ」と思って、飛び込みで周辺の牧場も3軒ぐらい訪ねたんです。

 すると、羊飼いの皆さんは口をそろえて「羊はもうからん」と言うんですけど、二言目には羊愛にあふれた言葉が出てくるんです。「北海道の草原には羊が一番似合う」とか(笑)。その話を聞いていて、「やらなくてはならない」という気持ちが湧いてきました。

 ただ、牧場とのコネクションが全然ないので、『SPINNUTS(スピナッツ)』という羊と羊毛の情報誌を出版されている本出ますみさんに協力を頼み、白糠町の羊飼いの武藤浩史さんを紹介してもらいました。そこから牧場や洗毛の会社など、つながりがどんどん広がっていきました。

 まずは、とにかく原毛を買って、ツイードが生まれた頃の、昔ながらのツイードをつくることを目標にしました。でもサプライチェーンが全くない。毛を運んだり、洗うなど、毛刈りした後の管理のノウハウも全くない。原毛はそのまま洗うことができないので、手でごみを取り除かなければなりません。それらの作業を請け負ってくれる所を探すところから進めました。

 そうして2019年春に刈った原毛をツイードに仕立てたら、中に空気を含んだ、とてもハリ感のあるしっかりしたものになりました。これは、まさしく羊飼いの愛にあふれた日本の羊毛だと感じて、自分が以前、どうしてやらなくてはならないと思ったのか、このとき分かった気がしました。

 翌2020年にジャパン・ウール・プロジェクトを立ち上げ、本格的に原毛を集め始めました。洗毛・染色、紡績の企業と体制を整え、プロジェクトが動き始めました。


海外産とは異なる国産羊毛の個性


 ――海外産の羊毛との違いは。


 伊藤 普段われわれが使っている海外産の羊毛は、薄手の洋服に適したメリノ種が圧倒的に多い。品質や特徴により選別・仕分けの工程を経ているので均一です。例えば一般的に使う「ロクマル」という規格の糸だと、20~21マイクロンでそろっています。ところが、北海道の原毛だと、同じ牧場、同じ1頭の毛から取っても、10~50マイクロンまで混じっています。繊維長や白度などもまちまちです。海外産とは原料としての性質が全然違うんです。

 実際にツイードを作ってみると、最初はスタイルとして「ハード」を狙ったので割とうまくいきました。クリンプ(縮れ)がしっかりしているので、膨らみ感のある織物を作るのにはとても向いているんです。ただ、次は「エレガント」にしようと思ったら「モード」になってしまった。作ってみないと何ができるか分からない羊毛とも言えます。これまでに15tの原毛を製品化しました。


ジャパン・ウール・プロジェクトの活動は「SPINNUTS 117」2025年12月号に詳しく紹介されている
ジャパン・ウール・プロジェクトの活動は「SPINNUTS 117」2025年12月号に詳しく紹介されている

 —―現状の活動は。


 伊藤 このプロジェクトっていうのは、基本的に牧場開発プロジェクトなんです。今の羊産業は食肉生産が断然多く、次に観光、最近はソーラーパネルの下草刈り、といった目的なのですが、刈った毛をどうするかのノウハウがすごく薄れてしまっています。

 われわれもたくさん知見を持っているわけではありませんが、各所から集めてきた情報を総合して「このように管理していただきたい」とお願いしています。当初は、春にミーティングという形をとっていましたが、牧場の繁忙期に重なりなかなか集まれないということで、最近は、北海道めん羊協議会の総会や、毛刈り大会などのイベントにお邪魔して情報を伝えています。

 原毛は現在、道内の3カ所の牧場に集荷拠点を設けて回収しています。われわれとしては輸入物と比べ高い値段で原毛を買っていますが、牧場経費に照らして見ると焼け石に水の金額になっちゃうんです。そうした中で、原毛をきちんと商品化することを一緒に目指していける関係づくりを大事にしています。

 原毛管理のノウハウや、サプライチェーンがない中で進めてきたので、互いに結構無理があることをやっていると思います。ただ、今は多少の我慢には目をつぶり「もっといい生産をやろう」「もっといいサプライチェーンをつくろう」と努力していかないと、なかなか続いていかないと感じています。


 ――公的な支援は。


 伊藤 当初は日本羊毛産業協会に事務局を置いていましたが、より現場感覚を大事にしようということで、今年から私が代表を務める国島㈱が事務局となってプロジェクトを継続しています。一方で、業界団体、公的機関が後ろ盾になってくれると、パブリックな立ち位置で事業を進められます。お力添えいただけるようぜひお願いします。

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