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エコー導入と繁殖データ管理で空胎日数を短縮 北海道枝幸町・開地牧場

  • 7月23日
  • 読了時間: 6分

更新日:7月27日


開地さん一家。左から未久さん、希望さん、稜(りょう)ちゃん、かほるさん、保さん
開地さん一家。左から未久さん、希望さん、稜(りょう)ちゃん、かほるさん、保さん

 宗谷管内枝幸町歌登地区の開地牧場。牧場代表の保さん(71)から実質的に経営のかじ取りを任される長男・希望さん(25)は、2023年に就農後、超音波診断装置(エコー)を導入し繁殖成績を向上。同地区では栽培に向かないとされる飼料用トウモロコシの栽培にも挑戦している。2023年に牛サルモネラ症に見舞われ大きな損害を受けたが、それを機に乾乳期管理などを見直し回復を果たした。保さんのつくり上げた草地に立脚した経営基盤を継承しつつ、新たな技術を積極的に取り入れている。

 ※本記事は、月刊『デーリィマン』本誌(2026年1月号)に掲載した記事を、デーリィマンプラス向けに一部体裁を整えて掲載するものです。


保さんが自作した6頭シングルのパラレルパーラー
保さんが自作した6頭シングルのパラレルパーラー

草地拡大し乾草販売を収入源に


 1945年、終戦とともに保さんの祖父・金太郎さんが乳牛3頭を導入して始まった開地牧場。当時は馬鈴しょも作付ける複合経営だったが、1960年に父・利男さん(故人)の代に酪農一本に切り替え、1970年に屋根が急勾配の合掌型キング式牛舎を建てた。

 保さんは地元の中学校を卒業して入った室蘭市の日本製鋼所の企業内学校を中退後、同市で溶接の職に就いた。「モノを自分でつくるのが好きで、それが今も生きている」と保さん。1974年に実家に戻り就農した当時は搾乳牛約25頭で、つなぎ飼い+パドックでの放し飼いだった。その後、1989年に船大工の協力を得てフリーストール牛舎を約1,000万円で新築。簡易パーラーを自作し、搾乳牛を40頭まで増やした。草地は30haから140haへ大きく増えたが、余剰分を乾草にして販売している。「牧草販売を収入源にすることを視野に入れて、草地拡大を進めてきた」と保さん。

 希望さんは名寄産業高校酪農科学科を卒業後、酪農学園大学(江別市)に進んだ。入学当時は陸上競技に力を入れていたが、2年生の時に同期生に誘われ乳牛研究会に入る。「北見市の山内雅斗先輩(山内誠さんの長男)と知り合い、酪農に対する考え方やショーへの姿勢などに感銘を受け、ショーカウの育成や体型改良への興味を高めた」と希望さん。さまざまな牧場で実習を重ね、4年生の時に恵庭市の有限会社福屋牧場でアルバイトをして、ショー関連の学びを深めた。その後、実家に戻り就農。大学で知り合った未久さん(25)と2024年に結婚。同年12月、長男・稜ちゃん(1)が生まれた。


育成牛に餌を与える際は牛に「おいでー」など声を掛ける
育成牛に餌を与える際は牛に「おいでー」など声を掛ける

破水直後の子牛の体勢確認など分娩対応徹底、死産率1%台保つ


 現在、乳牛81頭(経産牛48、育成牛33)と和牛繁殖雌牛1頭を飼養し、年間出荷乳量は560t(個体乳量は1万1,681kg)。乳質は乳脂率4.22%、タンパク質率3.56%、無脂固形分率9.03%、体細胞数7万2,000個/mLと良好な水準だ。作業は保さんが牛床清掃や圃場作業、妻・かほるさん(68)が朝の搾乳、希望さんが搾乳を含む作業全般、未久さんは育児を行いつつ夕方搾乳を担当する。飼料畑面積は140haで、オーチャードグラス主体としたリードカナリーグラスとの混播草地128ha、チモシーとクローバの混播草地10ha。3番草まで収穫する。

 2025年から新たな試みとして飼料用トウモロコシの栽培を始めた。歌登地区は収穫期が寒冷でトウモロコシ栽培には向かないといわれていたが、高止まりが続く飼料費の削減を目的に、2haに作付けしたところ、収量が5,100kg/10aに達し、宗谷管内で一番の成績となり、手応えを得た。「学生時代のアルバイト先から自走式ハーベスタを譲り受け、試しに播種したところ、初期生育の確保のため排水性の良い圃場を選んだ効果もあり、想像以上に出来が良かった。2026年は7haまで広げたい」と力を込める。

 2023年、枝幸町で牛サルモネラ症が流行し、開地牧場では23頭の殺処分を余儀なくされた。「ようやく作業に慣れてきた頃の出来事で、しょうがないこととはいえ精神的にかなり参った」と希望さんは振り返る。

 サルモネラ発症の原因として、乾乳期管理が不十分だったと考えた希望さんは、飼料メーカー・株式会社MFフィードでの勤務経験があり、乾乳期管理に詳しい未久さんや農業改良普及員にアドバイスを求めた。その結果、搾乳牛と同じだった飼料メニューを、配合飼料(前期:2kg、後期:4kg+加熱大豆0.2kg)と、チモシーとクローバの混播1番草を中心とした設計に変更した。これに加え、風力調整が可能な送風機を3台から6台に増やしたことで、第四胃変位の発症数がゼロになり、低カルシウム血症も減少した。「夏に与えていた粗飼料の質が悪く、栄養が不十分だった。このほか、長靴の洗浄や消毒を徹底するなど、感染症には細心の注意を払っている」。

 就農当初から繁殖管理を自身で行っていて、泌乳成績が優秀な牛には肢蹄の強さなどのゲノム値を参考に選んだ雌雄選別済み精液を使う。2024年から種雄牛選定の際には、一般社団法人ジェネティクス北海道が提供する交配相談サービス「GenFIT(ジェンフィット)」を活用。これらによって個体乳量を2023年の9,200kgから1万1,681kgに伸ばしている。

 後継牛以外には和牛を授精するか和牛受精卵を移植し、初生牛を市場に出している。就農してすぐに、エコーを45万円で購入し、妊娠しているかどうかを自らいち早く確認し、1頭1頭の繁殖データを表計算ソフト「エクセル」で管理。導入前に450日だった空胎日数を398日に短縮した。

 分娩対応についても陣痛確認後は分娩房に取り付けたカメラで監視し、破水直後には子牛の体勢に問題ないか手を入れて確認する徹底ぶり。こうしたきめ細かな管理により、分娩事故はほとんどなく、死産率は1%台と低い水準を保つ。


エコーで妊娠鑑定する希望さん。結果は全てデータベース化している
エコーで妊娠鑑定する希望さん。結果は全てデータベース化している

畜産クラスターの増頭制限撤廃が牛舎新築の追い風に


 今後は飼料用トウモロコシの増産と牛舎の新築が目標だ。2025年12月に畜産クラスター事業における増頭制限撤廃が示されたことも追い風になる。「増頭制限撤廃を受け、牛舎の新築が現実味を帯びてきた。新牛舎の規模などはまだ検討中だが、いつかかなえたい」と目を輝かせる。保さんは「牛舎は何十年も使うものだから、慎重に進めてほしい。人手不足などの問題も出てくると思うが、頑張ってほしい」とエールを送る。

 ショー出品にも意欲を示す希望さん。「全道クラスの大会や全日本ホルスタイン共進会で優秀な成績を残した同じ歌登の内田喜久男さんや小椋義則さんのようなブリーダーを目指したい」と今後の目標を語る。

 【文・宮田寛央/写真・鈴木中弓】


【牧場概要】

飼養頭数:81頭(うち経産牛48)

飼養形態:放し飼い(フリーストール)

飼料畑面積:140ha(牧草138、トウモロコシ2)

出荷乳量:560t/年


初出:月刊『デーリィマン』2026年1月号

初出企画:らくのう一家の生活

原題:エコー導入し自ら妊娠鑑定、結果をデータベース化し空胎日数短縮/乾乳期管理を見直しサルモネラ症被害から回復

※本記事は掲載時点の内容です。

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