乾乳舎新設と飼料見直しで低カル発症ほぼゼロ 北海道枝幸町・戸澤牧場
- 7月26日
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更新日:7月27日

北海道宗谷管内枝幸町の戸澤牧場で経営のかじ取りを任される戸澤慧(けい)さん(29)は、就農直後から牧草品質の向上を目指し、1番草の早刈りなどによる嗜好(しこう)性アップに尽力してきた。現在は母・宏美さん(59)と2人で、圃場関連を含む全ての牧場作業をこなしており、大型農機を活用しながら、搾乳牛65頭の経営を家族内労働力で賄っている。
※本記事は、月刊『デーリィマン』本誌(2025年7月号)に掲載した記事を、デーリィマンプラス向けに一部体裁を整えて掲載するものです。

父の入院や育児の影響で全ての作業を母と2人でこなす
戸澤牧場のルーツは、曽祖父が樺太から枝幸町音標に入植し、耕種農業を始めたことにさかのぼる。祖父・巌(いわお)さん(故人)が1973年に現在地の同町風烈布で本格的に酪農を始めた。2005年に父・靖さん(63)が80頭規模のつなぎ飼い牛舎を新築し、規模拡大を進めた。
幼い頃からトラクタが好きだった慧さんは、名寄産業高校酪農科学科を卒業後、道立農業大学校(十勝管内本別町)で酪農について学びを深め、卒業後すぐ家業に就いた。「大学校在学時から家の手伝いをしていたので不安はなかった」。靖さんから経営のかじ取りを任され、取材時点では2025年7月1日に経営移譲を受け、正式な経営主となる予定だ。北オホーツク農業協同組合金融共済課に勤めていた奈々瀬さん(29)と結婚したのは2017年。子どもは長女・翠ちゃん(4)と長男・維桜ちゃん(2)の2人。2025年7月末に二女を出産予定だ。
現在、総飼養数130頭(搾乳牛65、乾乳牛15、育成牛50)で年間628tの生乳を出荷する。乳質は乳脂率4.04%、タンパク質率3.41%、無脂固形分率8.87%、体細胞数11万個/mLで推移。草地130haには全てオーチャードグラスを作付け、3番草まで収穫する。
作業分担は宏美さんが哺乳・乾乳牛管理と牛床清掃、慧さんが圃場作業と給餌、育成牛管理を担当し、搾乳は2人で行う。靖さんは入院中で、奈々瀬さんは育児に専念しており、全ての作業を2人でこなす状況だ。
餌は粗飼料を1日3回、ロールカッターを用いて給与し、濃厚飼料は1日6回、自動給餌機で与える。給与量はビートパルプが主体の混合飼料2kgと、全酪連から購入している配合飼料10kgを基本とし、乳検成績を確認しつつ量を調整している。

早刈りで「おいしい」1番草と繊維分の多い2番草をバランス良く
草地面積は慧さんが就農した当初の80haから、近隣農家の離農に伴う草地分配により130haへと増えた。日々の作業を家族内労働力で完結させようと考えた慧さんは、大型機械導入のため積極的に投資。230馬力のトラクタや作業幅が11mのテッダを購入し、導入前と比べて圃場作業時間を2分の1に減らした。
「従業員を雇わず人件費を抑えて経営管理できているのがウチの強み。どうすれば作業コストを減らせるか日々模索している」と慧さん。
当初、乾乳牛も搾乳牛舎でつなぎ飼いしていて、餌は搾乳牛用配合飼料を少量与える管理方法で、乾乳牛10頭のうち2頭が低カルシウム血症を発症し、1頭は重症化するほどだった。獣医師を呼ぶことも多く、事態を重く見た慧さんは乾乳期管理を見直そうと、2020年に乾乳兼育成後期牛用フリーストール(FS)牛舎を新築。乾乳牛専用メニューの配合飼料と、通常の牧草よりも栄養分が低めで繊維質の多い2番草を給与し、3産目以降にはカルシウム剤の投与を徹底した。その結果、現在では低カルシウム血症の発症はほぼゼロになった。
体細胞数は就農当初、平均20万個/mL前後であり、乳質改善のため餌の質を向上させようと、牧草収穫に力を入れるようになった。それまでは靖さんと宏美さんの2人だけで作業をこなしていて、手が回らず収穫適期を逃しがちだった。慧さんが作業に加わるようになってから、1番草の早刈りが可能になり、栄養価と嗜好性が高まったことで、現在の11万個/mLまで体細胞数が減り、乳房炎発症率も低下した。
「早刈りしたものだけを与えるとルーメンマットが十分に形成されず、ルーメンアシドーシスなどを発症してしまうので、繊維質の多い2番草を間食として与えている。早刈りの草はおいしいのか、昔に比べて粗飼料への食い付きが良くなった」と慧さんは手応えを話す。
初めて乾乳牛をFS牛舎に入れた時、蹄病が多発した。原因は、それまでつなぎで飼われ蹄が弱っていたところに、FSの滑り止めの溝が引っ掛かってしまったからだ。それ以降、通路に自家製の乾草をたっぷり敷くようになり、こうした原因の蹄病は発生しなくなった。
牛舎の清潔性を高めるため、2024年から株式会社ジョイン(オホーツク管内紋別市)に2週間に1回、搾乳舎と乾乳舎それぞれに極微細噴霧器を用いた殺虫剤散布を依頼。1回当たりの費用は約6万円だが、牛舎内にハエやクモの巣は一切なくなった。
「散布の際に牛を外に出す必要もなく手間がかからないのが良い。これを始めてから肺炎も減ったし、ハエによる作業中のストレスもなくなった」と効果を実感する。

4Hクラブや青年部に所属 地域活動にも精力的に参加
2024年まで北海道4Hクラブの理事を務めていた慧さん。
「普段関わることがない畑作農家や離れた地域の同業者とつながりが持てて良かった。経営改善に向け努力する仲間を見て『もっと頑張ろう』と活力をもらえた」と青年組織の意義を語る。
2025年4月には南宗谷農業協同組合の青年部の役員に就き、地域行事に積極的に参加。「普段から活動する姿を見てもらい、地域で認められる酪農家になりたい」と意気込む。
ミルキングユニットの更新を予定している。デラバル株式会社のミルクユニットを使用しているが、同社がパイプラインミルカ事業から撤退したため、10年後くらいにはサービスを受けられなくなる。
「つなぎ用搾乳ロボットの導入も検討中で、2024年からオールジャパンブリーダーズサービス株式会社の交配相談サービス『GMS』を活用して、ロボット搾乳適性の高い種を付けている」と先を見据え動き始めた。
このように経営改善に余念がない慧さんだが、2025年6月に枝幸町ヘルパー組合を活用し、家族4人で旭川へ1泊の旅行に出かけた。
「人手が足りなくて大変だけど、家族で過ごす時間も大切にしたい」と笑顔を見せる。
【文・宮田寛央/写真・鈴木中弓、高橋海鵬】
【牧場概要】
飼養頭数:130頭(うち経産牛80)
飼養形態:つなぎ飼い
草地面積:130ha
出荷乳量:628t/年
初出:月刊『デーリィマン』2025年7月号
初出企画:らくのう一家の生活
原題:低カル抑制に向け乾乳舎新設、飼料メニューも見直し発症はほぼゼロに/大型農機を積極導入、圃場作業時間を半減
※本記事は掲載時点の内容です。
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