政府が第5次食育推進基本計画を策定 農林漁業教育や「大人の食育」を推進
- 7月14日
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政府は2026年6月24日、「第5次食育推進基本計画」を決定した。食育推進基本計画は食育基本法に基づき、食育の推進に関する施策の総合的な推進を図るために施策の基本的な方針や食育推進の目標を定めるもので、今回の第5次基本計画の期間は2026年度から5年間となる。
改正食育基本法の理念や基本施策を具体化
2005年6月の食育基本法の制定から約20年が経過し、食や農林漁業を取り巻く状況の変化や、食に関する国民の価値観などの多様化が進展した。
前回の基本計画(2021年3月策定)の計画期間には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や食料品等の物価高騰が生じたことなどで、栄養バランスの偏りや食習慣の乱れが見られたほか、食卓と生産現場の距離が遠くなる中で生産者と消費者の関係も希薄化している。
また、2024年に改正された食料・農業・農村基本法の第14条では、消費者の役割として農業等への理解を深めるとともに、消費に際して食料の持続的な供給に資する物の選択に努めることとされており、消費者の日々の行動変容につながる食育の取り組みの強化も重要になっている。
このような中で新たな基本計画は、食料安全保障の確保にも資する食育を推進し、「農林漁業教育」や「大人の食育」等を一層促進するために2026年5月27日に公布・施行された食育基本法の改正を踏まえて作成されており、その基本理念や基本的施策等を具体化したものとなっている。
今後5年間に特に取り組むべき重点事項として「学校等での食や農に関する学びの充実」「健全な食生活の実現に向けた『大人の食育』の推進」「国民の食卓と生産現場の距離を縮める取組の拡大」の3点を柱に掲げた。
目標に関しては「国民一人一人が自ら実践する目標(個人目標)」と「地域等が主体となって取り組む目標(地域目標)」として14項目の目標と20の目標値を設定。その達成状況については、PDCAサイクルに基づく取り組みを適切に実施することなどを位置付けており、食育の実効性を高め、食育を国民運動として十分に展開していくとした。
食生活の重要性等に関する指導を推進する
重点事項のうち「学校等での食や農に関する学びの充実」に関しては、朝食を欠食する子供の割合が増加傾向にあるなど、子どもたちの食の乱れが見られるほか、生産現場の実態を知らない子どもが増加しているとした上で、学校においては栄養教諭を中核として、学校給食における地場産物等の活用など地域の特色を生かした学校給食の実施などによって学校給食の時間や関連する教科などとの連携を通じ、食生活の重要性などに関する指導を充実するとした。
また、学校と家庭・地域との連携・協働の下、農林漁業体験等の「農林漁業教育」(食を支える農林漁業及びその関連産業についての理解と関心を深めるための教育)を推進していく。その実施に当たっては、食料安全保障や食料の合理的な価格の形成など農林水産業の現場課題や実情について、これまでの食料生産や食生活の動向、スマート農業をはじめとする農業技術の進歩を踏まえた指導を行うなど、地域の状況等に応じて理解や関心を深めるためのさまざまな工夫を実施することが重要になるとした。
「健全な食生活の実現に向けた『大人の食育』の推進」に当たっては、幅広い世代で栄養バランスの偏りや食習慣の乱れが見られる中で、特に若い世代では、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の回数や野菜類・果物類の摂取量が少ないなどの課題があると指摘。特に若い世代を中心に食や食生活を主体的に選択する世代を対象に、食や農林漁業への理解醸成と行動変容を促す「大人の食育」を推進していくことが重要であるとした。
「大人の食育」の推進に向けては、民間企業などを巻き込んだ国民運動の展開によって幅広い食育活動を促進する必要があるとした。このため、食品事業者(外食・中食事業者を含む)などによる食育活動や食生活の改善につながる商品の展開を推進するとともに、官民の幅広い連携・協働による新たな取り組みの展開等を促進する「官民連携食育プラットフォーム」の推進や、「食育実践優良法人顕彰」などによる職場における従業員などへの食育活動等の大人の消費者の行動変容を促す取り組みの推進を図るとした。
さらに「国民の食卓と生産現場の距離を縮める取組の拡大」に当たっては、国民の食卓と生産現場の距離が遠くなる中、「農林漁業体験を経験した国民(世帯)の割合」が減少しているとした上で、生産現場への理解や自然の恩恵や生産者への感謝の念を深め、国民の食卓と農業などの生産現場の距離を縮めることにつながる農山漁村での宿泊体験を含む農林漁業体験機会の提供や、生産者と消費者が直接つながる取り組みなどを推進するとした。
また、これらの取り組みの推進とともに、「大人の食育」等の取り組みとも連携を図りながら、国産農産物や環境に配慮した農林水産物等、食料の持続的な供給に資する食品の選択等について行動変容を促すとしている。
「個人目標」と「地域目標」に分類し設定
食育の推進目標に関しては、第4次食育推進基本計画からの継続性の観点から、取り組み主体別に①国民一人一人が自ら実践する目標(個人目標9項目)と、②地域等が主体となって取り組む目標(地域目標5項目)を分類して設定した。個人目標のうち、農林漁業体験の経験に関する事柄では、「農林漁業体験を経験した国民(世帯)の割合」の2030年度目標を「60%以上」(2025年度は57.1%)としたほか、「農林漁業体験を経験した国民(本人)の割合」に関する目標として「50%以上」(2025年度は45.5%)を掲げている。
地域目標のうち、学校給食における地場産物等の活用に関する事柄として「栄養教諭による地場産物等に係る食に関する指導の平均取組回数」の2030年度目標を「月15回以上」(2025年度は月14.1回)としたほか、「学校給食における地場産物を使用する割合(金額ベース)を現状値(2025年度)から維持・向上した都道府県の割合」として「90%以上」を目標値として掲げた。
このほか、「食育の総合的な促進に関する事項(具体的な施策)」として、「家庭における食育の推進」「学校、保育所等における食育の推進」「地域における食育の推進」「食育推進運動の展開」「生産者と消費者との交流の促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化等」「食文化の継承のための活動への支援等」「食品の安全性、栄養その他の食生活に関する調査、研究、情報の提供及び国際交流の推進」の7項目を挙げている。
このうち、「生産者と消費者との交流の促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化等」の取り組むべき施策のひとつに「農林漁業者等による食育の推進」を掲げた。
農林漁業に関する体験活動は、農林水産物の生産現場に関する関心や理解を深めるだけでなく、国民の食生活が自然の恩恵の上に成り立っていることや食に関わる人々の様々な活動に支えられていることなどに関する理解を深める上で重要であることから、農林漁業者や農林漁業に関する団体は、学校、保育所等の教育関係者をはじめとした食育を推進する広範な関係者等と連携・協働し、幅広い世代に対して教育ファームなど、農林漁業に関する多様な体験の機会を積極的に提供するよう努めるとした。
国や地方公共団体では、それぞれの地域性を考慮の上、酪農教育ファーム等の民間主導の取り組みなども含めて、全国の農林漁業体験に関する情報の取りまとめや発信等、必要な情報提供等によって農林漁業者等の活動の支援や消費者の参加を促すとしている。
(斎藤丈士)
≪酪農経済通信/2026年7月14日付≫
原題:政府が新たな「食育推進基本計画」を策定
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