雪印メグミルク、チーズ増産とホエー活用で需給改善へ 佐藤雅俊社長が方針
- 6月26日
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【札幌】雪印メグミルクの佐藤雅俊社長は6月24日、札幌市で開催した株主総会終了後の報道関係者説明会で、報道各社の質問に回答。2025年度決算の総括とともに、なかしべつ工場への設備投資を中心としたチーズ増産や需給調整への思い、脱粉問題や畜安法をはじめとした酪農乳業の課題などについても見解を示した。説明会には佐藤社長のほか、酪農担当の若林偉彦常務執行役員と村田正樹執行役員・北海道支社長兼北海道支店長が出席した。
既存の枠を越え自ら新たな価値を作り出す
佐藤社長は冒頭あいさつで、就任から5回目となった株主総会について「株主の皆さんからの温かい声援を肌で感じることができた。今後も役職員一同力を結集し、皆さんの期待に応えていきたい」と述べ、新経営計画「Next Design 2030」の2年目となる2026年度は「未来の軌道に確実に乗せるための正念場の一年」と位置付け、経営方針のテーマを「BEYOND BORDERS.」(境界を越える)と定めたことを説明。「これは既存の事業領域や価値提供の枠を越え、私たち自らが新たな価値を作り出していくという強い決意を示したもの」とし、その象徴的な取り組みの一つとして、2026年7月25日の「雪印北海道バターの日」に合わせ、新業態となるバター専門カフェ「THE BUTTER」を株式会社雪印パーラーと共に札幌市内にオープンすることを報告した。「私たちの原点は1925年、北海道で培われたバターづくりにある。ものづくりへの執念、製造技術への誇り、北海道酪農への敬意、その全ての思いがバターに込められている。THE BUTTERでは、ミルク本来の豊かな風味や芳醇な香り、なめらかなくちどけを本物の体験として五感でぜひ味わっていただきたいと考えている。創業100周年という大きな節目を越え、私たちは次の100年に向けて新たな価値を創造する。雪印メグミルクの挑戦に、ぜひ皆さんも期待していただきたい」とPRした。
2025年度は計画未達も構造改革一気に進めた
質疑では減益となった2025年度決算について問われ、「2025年度はNext Design 2030の達成に向けた取り組みと100周年という大きなイベントがあり、これらを通してわれわれがしっかり成長するということが2025年度の計画の中核にあった。プロダクトとコーポレート双方のブランド強化をメインに展開しながら、アセットの大変革、投資の意思決定を進めてきた。一方、2024年に競合他社でシステムのトラブルがあり、大幅な物流のイレギュラーを受けたほか、2025年は2度にわたる乳価改定のコストを吸収するため価格改定を実施しなければならず、それらの要素を全て盛り込んだ計画としていた。ここ数年値上げが続いているので、当初は買い控えがあり、結果的に上期は苦戦したが、後半にかけてブランド投資などさまざまなプロモーション効果と合わせ、下期は前年並みの物量まで回復できた。残念ながらトータルの計画に対しては7億円の未達だったが、しっかり価格改定し、収益力を蓄えた上で、物量が回復できるところまできたと思う。もう一つは、海外でさまざまな環境変化があり、Next Design 2030で計画した環境とはだいぶ変わってきたため、先の成長に向けて構造改革を進めるべきか、足元の対応を(優先)するべきか迷ったが、しっかり成長させたいということで、第4四半期を中心に構造改革を一気に進めた」と述べ、当初計画の目標に対しては未達となったものの、この先の成長に手応えを見せた。
なかしべつ工場をはじめとするチーズ増産に向けた設備投資については、Next Design 2030にも「中核中の中核」と位置付けているとし、「これからチーズの関税割当がなくなる。日本が輸入している約400万tはほとんどが原料チーズで、その全てをなかしべつで展開することは考えていないが、これからグローバルな調達のハードルも上がってくる。そのときに国産の生産力増強は必要。ただ一方で、日本の原料による生産がこれからどんどん拡大するのかはまだ不透明。その両軸をにらみながら、国内の生産拡大に対する受け入れ体制を整えると同時に、そこでできたものを、輸入チーズも含めて加工し、商品開発する新商品戦略。それらをなかしべつだけでなく阿見工場にも投資をし、次世代のチーズを展開するという大きな狙いがある」と述べ、なかしべつ工場のリニューアルと阿見工場増強の先にある高付加価値チーズ製造に意欲を示した。
また、チーズと合わせたホエーの生産能力拡大については「元々ホエーはチーズの副産物だが、世界的にはタンパク質としての価値が非常に高まってきている。われわれも国内のホエーの価値向上を担いたいと思っているが、残念ながらビジネスベースに乗るまでのホエーの生産量がない。なぜならチーズの生産量が格段に少ないからだ」と述べ、世界的なホエータンパクの需要拡大も視野に、国内におけるチーズ増産に向けた投資を先行させる考えを強調。「これは日本酪農にとっても、間違いなく将来の成長の基盤になると思う。生産者の皆さん、生産者団体、行政の方々にも、これからの日本の酪農乳業が目指すべき方向として提案しながら進めている。ぜひ皆さんにも共感していただき、大きな需要をプラスにできれば」と期待を込めた。
両輪も遅い車輪に合わせるわけにいかない
酪農乳業を巡る課題として、脱脂粉乳の在庫問題についても質問があったが、これについて若林常務執行役員は「脱脂粉乳の在庫問題は業界全体の問題。バターベースか脱粉ベースかによって計画生産に30万tぐらいの差が生じる。それを解消しない限り、酪肉近の730万tは到底守っていけないということで、生処官を交えて今もそこをやっている。当社も輸入品からの切り替えや飼料用への転換のほか、チーズからは一部バターとホエーができるが、脱粉が出ないということで、チーズの需要拡大も需給改善に寄与していくのではないかと思っている。さらに当社は国産乳資源を使用した製品展開に強みを持っている。引き続き需給改善に貢献していきたい」と回答。
佐藤社長も「(乳脂肪分と無脂乳固形分との)跛行性は現在の酪農乳業の大きな課題であり、酪農乳業にとって需給調整は重要なファクターだ。生産者がつくった生乳をしっかり受け入れ、それが需要に見合えばいいが、残念ながら季節偏差や量の偏差、価格の偏差などいろいろなものがあって需給のバランスが崩れる。それを吸収するのに、現在はバターと脱粉で全て対応している。これでは限界がある。チーズには360万tという生乳ベースの需要があり、それをほぼ輸入が担っている。これを国産に切り替えて需給調整し、さらに付加価値のある商品をアウトプットしていく、という戦略に切り替えるべきだと考えている。今すぐできることではないが、需給調整をバターと脱粉だけに頼っている状況は、次の時代に向かっていく上では違うと思う。ここはぜひ、われわれが先頭に立って進めていきたい。皆さんにも応援していただければ」と呼びかけた。
最後に、与党内で検討が進められている畜安法の見直しに関する質問に対しては、若林常務執行役員が「需給調整が一部事業者に偏重するのはやはり課題であり、その課題を是正するための畜安法改正だと認識している。生乳取引は価格だけでなく、量と質の3つの安定が非常に重要だと思っており、その3つの安定については、引き続き指定団体ホクレンとの信頼関係を念頭に考えていきたい」と説明。
佐藤社長も「畜安法が目指すところは酪農生産の安定であり、生産者にとっては乳価が非常に大きなファクターになってくるが、乳価の決定には、価格と品質と量の3つが安定して初めて、適正な価格形成になり、生産者の皆さんも安心して生産ができる体制になるし、われわれもしっかりとしたブランディングの下で商品設計し、需要拡大ができる。この一角が崩れるだけで間違いなく全体のバランスが崩れる。酪農と乳業は車の両輪と言っているが、片方がぎくしゃくすると、車は決して同じ方向には向かっていかない。必ずどちらかに曲がる。でもわれわれは、遅い車輪に合わせるわけにはいかない。だから手を携え、一緒になってもう一度同じ方向に進めていく。そのような形でいろいろ行政からの提案もある。価格形成、畜安法、食料安全保障など、われわれも意見を発信しながら、共にスピードが遅くなることなく(進めていきたい)。これは今や国内の競争だけじゃなく、グローバルでの競争だ。需給の話もあったが、世界を見据えたときに足踏みを続けるわけにはいかないので、ぜひ生産者の皆さんと一緒に、少しでも速度を上げながら、今の難しい状況を打開できればと思う」と述べ、関係者にエールを送った。
(高田康一)
≪酪農経済通信/2026年6月26日付≫
原題:需給調整やホエー活用、チーズ増産に意欲
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