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《この人に聞く》日本酪農政治連盟・臼井勉委員長 脱脂粉乳の在庫対策と消費拡大を進めたい

  • 5月20日
  • 読了時間: 6分
酪政連の臼井勉委員長
酪政連の臼井勉委員長

 日本酪農政治連盟(酪政連)は今年3月の通常総会で退任した柴田輝男氏の後任に臼井勉氏を委員長に選任した。

 『酪農経済通信』など酪農専門紙の共同取材に応じた臼井委員長は、業界課題となっている脱脂粉乳の在庫削減対策と牛乳類の消費拡大を進めていく必要性を強調したほか、改正畜安法施行後の生乳需給のあり方に対しても問題提起した。

 臼井委員長は1948年生まれ、栃木県出身。1966年に就農した後、酪農とちぎ農協副組合長を経て2017年6月に酪農とちぎ農協組合長に就任(現職)。酪政連では副委員長を経て、今年3月に委員長に就任。全国酪農協会副会長、全酪連理事、栃木県牛乳普及協会会長など要職多数。2021年6月に栃木県知事表彰(産業振興功労・農業)、昨年11月に旭日双光章を受章した。(聞き手・斎藤丈士、4月22日取材)


在庫対策と併せてSNF需要の拡大も必要


 ――委員長に就任してから1カ月が経過した。就任に当たっての抱負や、今の酪農乳業界を取り巻く課題をどのように見ているのか。

 臼井 私も副委員長として3年程度、酪政連運動に携わってきた。委員長が代わったからといって方向性が大きく変わる事は無い。まずは現在の酪農情勢下の問題解決に向けてしっかり対応していくことが大事だと考えている。今は何といっても酪農乳業界の共通課題となっている脱脂粉乳の在庫対策と牛乳類の消費拡大を進めていくことだ。

 来年度(2027年度)に向けた重点政策については、今後議論を進めていくことになるが、一番の問題は生乳需給の緩和が続いていることだ。

 需給調整にも関係する改正畜安法施行後の生乳流通のあり方をめぐっては、農水省や酪農・畜産に造詣が深い与党議員に訴えて、生乳流通の「不公平感」の改善をお願いしてきた経緯もあった。

 現在の畜安法の下で生乳需給の課題を一番背負っているのは、都府県の中でも加工率が高い関東地域だと認識している。北海道から農協系統外への出荷を通じて飲用牛乳に仕向けられる生乳が大消費地の首都圏に流入している現状がある。関東ではその影響を受けて、年末年始や春休みなどの需給緩和期には東日本地域だけでは生乳を処理しきれずに西日本の乳製品工場にも委託している状況だ。

 こうした中で昨年度から全国的な生乳需給安定のための取り組みを行うためにJミルクが造成する基金(酪農乳業需給変動対策基金)への参加を畜産クラスター事業などの補助事業の要件とした「生乳需給安定クロスコンプライアンス」の導入が実現したことは、私たちの要請活動のひとつの成果だと思っている。

 脱脂粉乳の在庫削減対策と並行して無脂乳固形分(SNF)需要の拡大も欠かせない。このうちヨーグルトに関してはJミルクが消費拡大施策を展開しているが、これ以外の品目での需要拡大も必要だ。筋トレブームが続く中で、プロテインなどのタンパク質補給食品の市場拡大も続いている。スポーツをする人が牛乳とプロテインを混ぜて飲む習慣があることから、プロテインの原料を国産に置き換えていくことも中長期的な課題となる。


酪農ヘルパー関連予算の拡充は大きな成果


 ――都府県最大級の酪農専門農協の組合長として、生産基盤の現状をどのように見ているのか。

 臼井 酪農とちぎ農協の管内でも経営者の高齢化が進む中で他地域と同様に離農に歯止めが掛かっておらず、後継者がいない組合員も少なくない。一方でメガファームや搾乳牛飼養頭数が200~300頭程度の組合員が生乳生産を増やしていることもあり、組合としての生産量は横ばいから微減で推移している。

 家族酪農の継続に向けては、外部支援組織の役割がますます重要になる。酪農とちぎ農協では子会社の㈱酪農とちぎアグリサポートで育成牛の管理や自給飼料生産の作業受委託などを行っている。

 昨年の畜産物価格論議でも酪農ヘルパーへの支援強化が大きな論点となったが、関連予算が2025年度の7.3億円から26年度には10.3億円へと拡大し、酪農ヘルパーの待遇改善等の取り組みなどの支援メニューも拡充した。

 酪政連では以前から酪農ヘルパーに対する支援の拡充を要望してきた経過もあったが、予算が増えたことはありがたいことだと思っている。拡充された事業をどのように活用していくかが課題となるが、それぞれの現場でしっかり取り組んでいただきたい。そして、来年度も酪農ヘルパーに関係する予算を減らさずに継続してほしい。酪政連としても引き続き要請内容として掲げていく。

 また、畜産クラスター事業では、搾乳牛舎の申請受付を再開したことや機械導入での頭数制限撤廃といった要件緩和が実現した。利用に当たってのハードルが下がって酪農家が事業を使いやすくなったことも、ひとつの成果だ。

 今年4月から食料システム法が完全施行された。飲用牛乳も指定飲食料品に指定され、コスト指標を作成することになった。生産者側の交渉力の強化につながるかについても、しっかり議論する必要がある。

 当然ながら乳価交渉は指定団体などが乳業メーカーと行うものであり、酪政連は乳価交渉に直接関与することはない。引き続き情報提供などを通じて交渉に臨む生産者側を支えていきたい。


高校生以降の牛乳離れに対する対策が必要


 ――牛乳類の消費拡大に向けた課題は。

 臼井 Jミルクが毎年実施している「食生活動向調査」によると、給食で牛乳が提供される義務教育が終了した10代後半は牛乳類の飲用頻度が低下しているのが実態だ。

 このような問題意識の下で酪政連では、高校での給食導入と牛乳の提供も含めた消費拡大策を要請してきた。その結果、ALIC事業を活用した高校への牛乳自動販売機の設置に関する実証実験が数校で実現したが、この層に対する消費拡大のアプローチはまだまだ道半ばだと思う。

 一方で子育て支援を目的に、小学校での給食無償化や高校授業料の無償化が実現するなど、日本の教育を取り巻く環境は大きく変化している。

 このような中で高校での給食導入を求めていくだけではなく、高校生以降も飲用習慣を継続してもらうための普及・啓発活動に継続して取り組む必要がある。併せて小中学校での食育活動の中で、酪農の理解醸成や季節によって風味が変化する牛乳の特性なども伝えていくことも必要ではないだろうか。

 私は栃木県牛乳普及協会の会長も務めているが、県からの補助金を活用して牛乳類の無料配付イベントや県内のメディアを活用したPR活動など、消費拡大に向けたさまざまな事業を進めてきたが、イベント開催にはお金だけではなく手間も掛かっている。消費拡大に向けた施策に即効性はないが、継続した取り組みが大事だと考えている。

 ≪酪農経済通信/2026年5月20日付≫

 原題:脱脂粉乳の在庫対策と消費拡大を進めたい

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