飲用牛乳・脱脂粉乳の需要低迷続く――農水省企画部会、基幹乳製品工場の整備強化へ
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食料・農業・農村基本計画で定めた目標やKPI(重要業績評価指標)の検証に向けて、農林水産省は8月21日、食料・農業・農村政策審議会企画部会の会合を開いた。7月24日の前回会合に続き、日本の食料供給に関わる「食料自給率・品目」「安定的な輸入の確保、動植物防疫」「輸出の促進(輸出拡大等による『海外から稼ぐ力』の強化)」について、施策の進捗状況や有効性を分析。目標達成に向けた課題と対応方向を示した。
「飲用牛乳と脱脂粉乳」需要の低迷が継続
品目ごとの状況のうち「生乳」については、消費面で食の多様化や牛乳・乳製品が有する健康機能への評価の高まり、インバウンドや輸出など需要増の要因がある一方、人口減少と少子高齢化が進む中、生産コストの高止まりを受けた値上げの影響によって、全体では需要が減少し、需給が緩和していると指摘した。需給ギャップの解消に向けては、特に低迷傾向にある飲用牛乳と脱脂粉乳の需要好転が必要になるとしている。
生産面では、需要減少に伴う需給ギャップが継続していることから、その解消に向けた取り組みを続ける必要があるほか、飼料費をはじめとする生産コストの低減、省力化、生産性向上による収益改善が必要になると提起した。
輸出については、輸出先国・地域のニーズに合った牛乳・乳製品の生産・輸出や、輸出先国・地域における認知度の向上をはじめ、価格に見合った価値の訴求が必要になると指摘している。
一方、加工・流通面では、2024年問題以降の物流コストの上昇や人手不足のほか、乳製品工場の老朽化や中小乳製品工場の撤退による不需要期の生乳処理可能量の低下、西日本の夏場における牛乳不足などへの対応が必要になると指摘した。その上で、生乳需給の安定を図り、生産コストの上昇を適正に価格へ反映できる環境の整備が必要になるとしている。
輸出拡大や需給調整で基幹工場整備が必要
課題への対応方向として、消費面では、需要が低迷傾向にある飲用牛乳と脱脂粉乳について、生産者や乳業者による消費拡大、国産ソフトチーズなど高単価チーズ市場の拡大等の取り組みや、需給安定に向けた全国的な支援のさらなる拡大を図るとした。
生産面では、脱脂粉乳の在庫低減対策等の全国的に必要な取り組みへの拠出を、酪農関係の主要な補助事業への申請要件とする措置(生乳需給安定クロスコンプライアンス)を強化することで、関係者が参加する取り組みのさらなる拡充を図る。
また、生産コストの低減・省力化・生産性向上に向け、家畜改良の推進などによる長命連産性の向上や、ICT、酪農ヘルパー等の活用による労働負担の軽減を引き続き推進する。このほか、経営の安定や生乳需給への影響を踏まえ、経産牛1頭当たりに飼料作付面積要件を付した上で、経営の持続性向上や社会的課題への対応に必要な施設整備、機械導入等を農業構造転換集中対策を通じて推進するとしている。
輸出に関しては、オールジャパンでのプロモーションや市場等の調査・分析を行うとともに、指定団体、産地自治体、乳業者等が一体となった取り組みや、新たな商流構築のさらなる拡大を図るとした。全国的な需要拡大の取り組みの一つとして、輸出やインバウンドへの取り組みを一層促進するほか、農業構造転換集中対策を通じ、輸出拡大に必要となる乳業工場整備への支援を一層強化するとした。
加工・流通を巡っては、荷待ち時間の削減など、物流効率化に向けた取り組みを一層推進する。また、農業構造転換集中対策を通じて、基幹となる乳製品工場の整備への支援を一層強化するとしている。
加えて、夏場に西日本へ牛乳を安定供給する体制の確立に資するよう、既存の牛乳工場を再編し、広域調整を強化する施設整備を支援する。引き続き脱脂粉乳の在庫低減に取り組むとともに、合理的な価格に関する消費者の理解醸成などを通じ、生産コストを適切に乳価へ反映できる環境を整備するとしている。
米の消費減などで熱量ベースの自給率低下
「食料自給率」のうち、2025年度の供給熱量ベースの自給率が37%となった背景について、増加要因が0.2ポイント、減少要因が1.2ポイントとなり、結果として前年度比1.1ポイント低下したと説明した。2030年目標の45%とは8ポイントの差がある。
減少要因のうち、米については、本州で天候に恵まれ、単収が向上したことなどから国内生産量が増加したものの、昨年夏からの米の集荷競争激化による2025年産米価格の高止まりなどの影響で消費量が減少し、自給率を0.8ポイント押し下げる要因になったと指摘した。
その他の品目では、小麦は国際価格が低下したことなどを背景に輸入量が増加し、消費量も増加した。野菜は夏季の高温・少雨による生育不良など、でん粉は原料用いもが高温・干ばつの影響を受けたことなどによって、それぞれ生産量が減少した。
畜産物は、鳥インフルエンザの発生に伴う鶏卵の生産量減少に加え、飼料用米の生産量減少などによって飼料自給率が低下し、自給飼料による畜産物の生産量が減少した。さらに魚介類は、海洋環境の変化などを背景に漁獲量の減少傾向が続き、全体として前年度を下回ったと説明した。
また、2025年度の生産額ベースの食料自給率が66%となった背景について、増加要因が3.1ポイント、減少要因が0.6ポイントとなり、結果として前年度比2.5ポイント上昇した。2030年目標の69%とは3ポイントの差がある。
増加要因として、米は価格の高止まりなどにより国内生産額が増加したほか、畜産物では鳥インフルエンザの影響や堅調な需要による鶏卵価格の上昇などを背景に、国内生産額が増加した。
このほか、小麦では主要輸入国である米国、カナダ、豪州で生産量が増加した。また砂糖は、主要生産国であるブラジル、インドの生産量増加に伴う世界的な余剰見通しから国際相場が下落したことなどにより、輸入額が減少した。これらの要因によって、食料自給率を3.1ポイント押し上げたと分析した。
一方、減少要因としては、野菜・魚介類ともに生産量や漁獲量の減少に伴い、国内生産額が減少したことなどから、食料自給率を0.6ポイント押し下げたとしている。
(斎藤丈士)
出典:酪農経済通信 2026年8月24日付
原題「企画部会で食料供給や輸出促進施策を検証」
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