牛乳の品質劣化を抑えるPEF殺菌 熊本大など実用装置を開発へ

熊本大学、岩井機械工業株式会社、キユーピー株式会社、熊本県酪農業協同組合連合会(らくのうマザーズ)が進める「食品品質を劣化させない高電界パルス殺菌技術の社会実装」が、科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)2026年度産学共同ステージⅡに採択された。牛乳や液卵の品質、栄養を保ちながら殺菌できる実用装置の開発を目指す。
高電界パルス(PEF)殺菌は、液体中の細菌に100万分の1秒程度の強い電界を加え、細胞膜を破壊して死滅させる技術。菌に強く作用する一方、細胞膜を持たない食品成分には作用しにくく、加熱殺菌による風味や物性、栄養成分の変化を抑えられると期待されている。
果汁や野菜ジュースなどの青果汁では欧米で実用化されているが、牛乳や液卵などの高タンパク食品を毎時100L以上の流量で処理した事例は報告されていないという。
牛乳など粘性のある液体を大流量で処理すると、流路の壁付近を流れる速度が遅くなり、電気エネルギーが過剰に加わる「ホットスポット」が生じる。これにより、食品成分の変性や電極への焦げ付き、流路の詰まりなどが発生することが、実用化に向けた課題となっていた。
研究グループは、液体に電気エネルギーを与える電極部と、高電界を発生させる処理部を分離した独自構造のPEF処理槽を開発。熱伝導性に優れたアルミナと水冷機構を組み合わせ、ホットスポットや食品成分の熱変性、電極の損耗を抑える。
研究期間は2026年10月から2029年3月までの2.5年間。まず毎時10Lの試験装置で連続処理の知見を蓄積し、牛乳と液卵を毎時100L処理できるパイロット装置を開発する。原料に近い品質を保ちながら十分な殺菌効果を確保し、故障せず8時間連続で稼働することを目標とする。
熊本大学が研究開発を統括し、食品機械メーカーの岩井機械工業と食品メーカーのキユーピーが参画。らくのうマザーズは協力機関として、牛乳を対象とした研究開発に加わる。
技術の実用化により、原料に近い風味や物性、栄養成分を保った食品の提供に加え、殺菌工程の省エネルギー化、省資源化、省力化を図る。賞味期限の延長による食品ロスの削減や、流通・販売エリアの拡大も期待される。
研究終了後は、毎時100Lの装置を小ロット食品向けに市場展開する計画。開発した装置を新製品開発用の試験設備として食品事業者などに開放するとともに、中・大規模な食品製造に対応する毎時1,000L処理装置の開発を進める。
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