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《北のめん羊ワンダーランド 18》建設業の多角化で「アスパラひつじ」を生産 北海道美唄市・西川農場

9月4日
読了時間: 5分

更新日:9月4日

アスパラを給与することでうま味が増す
アスパラを給与することでうま味が増す

 北海道美唄市の西川農場は、建設業を本業としながら2005年に羊の飼養を始めた。2007年からは農協の選果場で切り落とされるアスパラガスの根元を給与し、「アスパラひつじ」としてブランド化。羊肉のPRにつなげている。【文・写真=星野晃一/2026年7月取材】※「北のめん羊ワンダーランド」は毎週金曜日更新中!


2棟での舎飼いが中心
2棟での舎飼いが中心

3品種とその交雑を主体に約250頭を飼養


 西川農場の現在の総飼養頭数は約250頭。内訳は、繁殖雌約60頭、種雄4頭、更新用育成約20頭、肉用約25頭だ。品種はサフォーク、フライスランド、テクセルおよびそれらの交雑種で、サフォークがおよそ7割、フライスランドが2割、テクセルが1割となっている。

 種雄はサフォーク3頭とフライスランド1頭を用いた自然交配で、現在は2品種交雑が中心だ。テクセルは雌のみ導入しており、今後の改良に活用していく考えだ。

 出荷はラムからホゲットの間に行っているが、月齢の指定や品種の指定は受け付けていない。出荷の際は枝肉だけでなく、除骨整形した部分肉にも対応している(と畜・加工場に依頼)。現在の年間出荷頭数は約100頭。販売先の約8割は北海道内の飲食店で、残りが道外だ。

 2005年に羊を飼い始めた当初は全てサフォークだったが、10年ほど前、羊乳チーズづくりを目指してフライスランドを導入した。美深町の牧場から譲り受け、多産性を生かした産子数の向上を期待し、サフォークとの交雑を進めた。一方で、フライスランドの血が強くなると肉付きがやや劣ることから、肉質改善を目的にテクセルも導入した。その際サフォークの導入も検討したが、入手が難しく、千歳市の牧場からテクセルの母羊10頭を譲り受けた。

 血統登録は、繁殖用として残す個体のみ行っている。


離乳後の繁殖雌を放牧する
離乳後の繁殖雌を放牧する

舎飼い主体、離乳後に繁殖雌を放牧


 飼養は舎飼い主体で、畜舎は2棟ある。牧場全体の敷地は約2.5haで、このうち1.7haは当初から所有していた土地、残りは市有地だった残土処分場を購入したものだ。購入後は石拾いや牧草播種を行い、現在までに半分ほどを草地化した。

 放牧は離乳後の繁殖雌のみを対象とし、その他は舎内で飼養している。草地管理について特別な方法は取っていないが、自社所有の建設機械を活用して数年ごとに耕起や播種を行っている。

 配合飼料は単味飼料を購入して自家配合している。主に規格外小麦、圧ぺんトウモロコシ、圧ぺん大麦、ビートパルプ、アルファルファペレット、ふすま、米ぬかなどで、その時々に出る単味に応じて配合を調整している。配合飼料の設計の際は、コンサルタントが作成した計算ソフトを活用している。

 また、西川農場の羊肉は、アスパラの根元部分を給与した「アスパラひつじ」としてブランド化していることが大きな特徴だ。この羊肉を検査したところ、輸入ラムとの遊離アミノ酸分析では、うま味成分に関係するグルタミンが突出して多いという結果を得ている。


西川崇徳代表
西川崇徳代表

売れない時代を乗り越え、口コミで販路開拓


 羊牧場を始めるきっかけは、代表取締役の西川崇徳さんの父親が趣味で飼っていた3頭の羊だった。ポニーと一緒に飼われていた羊に、地元のアスパラ農家から選果場で出るアスパラの根元部分を「餌にならないか」と持ち込まれ、与えてみたところ、よく食べることが分かった。

 西川さんが「面白いな」と羊について調べるうちに、北海道はジンギスカンが名物でありながら、流通する羊肉の多くが輸入品であることを知り、「北海道産羊肉をつくろう」と考えた。

 当時は父親が築いた建設業一本だったが、将来への不安もあり、新たな事業として羊肉生産に価値を見いだした。しかし、始めた当初は販売先の確保に苦労した。西川さんは「ちょうど第一次ジンギスカンブームが落ち着いたころで、紹介された飲食店を回っても、『半額なら買う』と言われたこともありました」と振り返る。

 転機となったのは、近隣の新十津川町にあるソーセージ工房への加工依頼だった。原料肉として羊肉を持ち込んだところ品質を評価され、自宅でのバーベキュー用として羊肉を求められるようになった。その席に参加していた酒蔵の杜氏が飲食店関係者へ「おいしい羊肉がある」と紹介してくれたことから、札幌の飲食店などへ販路が広がっていった。加工品は現在も新十津川町のメーカーへ委託し、ソーセージとして販売している。

 なお、毎年春に刈り取った羊毛は、品質の良いものに洗毛・カード加工を施して自社ネットショップで販売している。


羊肉のソーセージ
羊肉のソーセージ

小麦栽培とカフェの経営へ


 西川さんは2015年に小麦栽培も始めた。きっかけは0.7haほどの離農地購入だった。周辺農家が購入を見送った条件の厳しい土地だったが、建設会社として保有する重機を活用し、暗きょ排水や整地を自ら実施して営農可能な圃場に整備した。小麦は帯広のパンメーカーに直接販売している。

 また、2016年には牧場に隣接して地元食材を使ったカフェを開業した。地元小麦を使って焼いたパンが看板メニューだが、羊肉のソーセージもここで買うことができる。「美唄まで来てもらい、牧場の風景や羊を見てもらうことも地域の魅力発信につながります」と西川さんは話す。

 フライスランド導入時の目的だった羊乳利用も継続していて、これまで搾乳した羊乳を冷凍保存し、地元の高校へ提供してきた。高校では羊乳チーズを製造・販売し、地域イベントにも出品している。今後は羊乳だけでなく羊肉も提供し、高校でソーセージやハムなどの商品開発を行う構想もあるそうだ。


母羊を増やし、安定供給を目指す


 農場では現在、繁殖雌羊の増頭を進めている。以前、導入した種雄の繁殖成績が悪く、一時的に子羊の生産が大きく減少したことがあった。年間を通して定期的に羊肉を必要とする飲食店への供給を優先した結果、本来更新用として残す予定だった繁殖雌まで出荷せざるを得ず、繁殖基盤が縮小した経緯がある。現在はその回復を進めながら、安定供給体制の再構築に取り組んでいるところだ。

 羊の管理は西川さん夫妻と正社員1人の計3人で運営している。建設業で培った技術や機械を生かしながら、羊、小麦、飲食、加工、教育連携までを組み合わせた独自の経営を実践している。

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