≪北のめん羊ワンダーランド❸≫毛刈り日本一を決める大会が毎年北海道で 世界選手権への予選も兼ねる
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新得町のヨーク―シャーファームで開催された2026年大会
「今年の毛刈り日本一は誰か」。そんな大会が年に一度、北海道で開かれている。2026年は5月9~10日の2日間、十勝管内新得町のヨークシャーファームで開催された。
めん羊を飼養する上で、毛刈りは欠かせない作業だ。羊毛の収穫はもちろん、暑さに弱い羊の健康管理、さらに糞などの付着を防ぐ衛生管理の目的がある。牧羊業が盛んな海外ではプロの毛刈り職人も存在するが、日本ではまれ。そのため、日本の羊飼いには毛刈り技術の習得が求められている。
世界基準で技術を競う
大会は「Japan Shears(ジャパン・シアーズ)」の名称で、2015年から開催されている。途中、コロナ禍による中止を挟み、2026年で12回を数える。
毛刈りの世界大会開催年に合わせ、ジャパン・シアーズが日本予選を兼ねる年もある。過去には、2017年のニュージーランド大会、2019年のフランス大会、2026年3月のニュージーランド大会の3大会に、日本から選手を送り出している。
審査は世界共通ルールに基づき、厳格に行われる。日本の多くの選手は世界基準では「ノービス(初心者)」クラスに位置しており、日本大会では、ノービスより上級の「ジュニア」、下級の「ビギナー」の3クラスに分かれて腕を競う。

評価の基準は、「羊にストレスを与えない」「羊毛の価値を下げない」ことに重きを置く。ボード、ペン、タイムの3つのジャッジで加点され、その合計点が少ない方が上位となる。このうちボードジャッジは、毛刈り中のセカンドカット(二度刈り)を体積で加点する。ペンジャッジは、刈り終えた羊の刈り残しとスキンカット(刈り傷)で加点する。タイムジャッジは、スタートからバリカンを止めるまでの時間を計り、20秒ごとに加点する。
さらに、羊毛を投げる、羊を逃す、羊の出し入れを手伝ってもらう、刈り終えた羊毛を傷めるなどの行為も加点対象となる。そのため、スピードが速くても、作業が雑だと上位には入れない。
このように審査は厳格に行われるが、司会・進行を務める2人の実行委員が、時には選手の裏情報を伝えるなど、軽妙なトークで会場を盛り上げ、終始和やかな雰囲気で進む。

2026年は青沼頌平さんが日本一に
2026年大会には、ビギナークラス6人、ジュニアクラス8人、ノービスクラス14人の計28人が参加し、会場のヨークシャーファームが飼養するサウスダウン種約100頭を毛刈りした。
審査の結果、最高位のジュニアクラスで1位となったのは、長野県の青沼頌平さん(KAMISUKI SHEEP FARMONY)。出場5回目にして、初めて日本一の栄誉に輝いた。(文・写真/星野晃一)
Japan Shears 2026 実行委員長・有光良次さんに聞く

――大会が始まったきっかけは。
有光 今ニュージーランドで毛刈り職人として働いている大石隼(初代実行委員長)が、日本にはワールドスタンダードで毛刈りしている人がおらず、そういう情報に触れる機会も全くないので、これを改善したいという思いを持っていました。
あわせて、日本代表チームをつくって世界大会に出場したいという熱い思いもあり、それに賛同した複数の牧場主らが、2015年に日本での大会を立ち上げました。
――参加者の状況は。
有光 最初はクラス分けがない状態でした。だんだん参加者が増え、初心者も増えてきたため、ノービスクラスの下のビギナークラスや、上級のジュニアクラスを設けました。
参加人数は年によって違いますが、大体20~30人くらいです。日本各地から参加がありますが、こういう大会を開くにはどうしても羊の頭数が必要になります。そのため、飼養頭数の多い牧場がある北海道での開催になっています。
――観覧者も結構いますね。
有光 めん羊で新規就農を目指している人、畜産系の大学生や高校生、羊毛を扱う作家さん、羊に関わる産業に携わっている方など、所属はいろいろです。中には、大会運営にも携わっていただいている方もいます。
――大会の経費はどのように賄っていますか。
有光 昨年から、関連業界の会社などから協賛を頂くようになりました。大石が扱っている海外のバリカンや刃を優勝賞品として提供していただく形で、基本的には運営しています。役所など公的な機関の支援は、今のところありません。ほぼ手弁当で運営しています。
――世界大会の選手選出はどのように行いますか。
有光 世界大会開催の前年のジャパン・シアーズで、ビギナー、ジュニア、ノービスとは別に、世界大会参加希望者のクラスをつくり、予選を行って決めます。
――通常、牧場で毛刈りをするのはいつですか。
有光 北海道は3月から5月にかけてが多いですね。羊は寒さには非常に強い家畜なので、暑くなる時期は、毛がない方がコンディションがいいんです。また、毛の中にどんどん汚れも入ってくるので、長く伸ばし続ければいいというものではありません。
夏になった時に、刈りたてよりも少し毛の長さがあるぐらいが、直射日光に対しても、薄いサマーセーターを羽織っているようになって具合がいいんです。
――毛刈り技術を教える側の苦労は。
有光 北海道もそうですが、府県は特に牧場が点在しているので、なかなか勉強する機会がありません。大石が日本各地で毛刈りの技術や機械のトレンド、メンテナンス方法などを含めて広めていきました。
――大会参加者数は年々増えていますか。
有光 去年ぐらいまでは増加傾向でしたが、今年は少し頭打ちですね。大石の活動のおかげで、府県でも毛刈り職人が何人か生まれました。そのため、新規で羊牧場を始めた時に、毛刈りを覚えなくても済む仕組みができ始めた影響かもしれません。
羊飼いを始める敷居が最近下がってきたという点では良いのかもしれませんが、羊飼いなら毛刈りの基本を覚えておいて間違いありません。
――一般の人が観覧するにはどうしたらよいですか。
有光 自由に来ていただいて結構です。特に事前申し込みも必要ありません。ただし、海外に2週間以内に行ったことがある人は、基本的には入場できません。
SNSで「ジャパン・シアーズ」と検索してもらえれば、大会の情報が見られます。当日は、会場に入る前に踏み込み槽で靴を消毒し、名簿への記載をお願いしています。家畜保健衛生所にアドバイスをもらいながら、アップデートして防疫を行っています。


